車やバイクの電気系をイジる時には避けられない電線の接続と端子の圧着、皆さんコレをキチンとやってはりますか?
日頃、素人や一部のプロがイジり倒し、後に廃車になった車をバラしていて思う事である。
そこで俺が普段やってる接続方法の紹介や、悪い例なんぞを検証してみようと思う。
これが正しい接続とは言わないが、
ので参考にしてもらえたら幸いである。
実績はある
さてまずはDIYerが良く使っているであろうギボシ端子。
比較的安価に工具セット売ってるし、施工後の着脱も簡単で使いやすい。
しかしこのギボシ、電線サイズと工具を選ぶというか、細い電線や安い工具を使うと抜けやすいという欠点がある。
近年の車のハーネスは軽量化&最適化と言う名の
が進み、電線がとっても細いのである。
ケチ
一般に売ってるキボシ端子の適正電線サイズは1.25sqe辺りかと思うが、実際車に使われてるのは0.5〜0.75sqe辺りが多い。
良くイジられると思われるオーディオでは少ないと思うけど、場合によっちゃ0.3sqeとかも結構ゴロゴロある。
こういう細い電線をギボシで普通に圧着すると、まああっけなくスルリと抜けてしまうのだ。
だからって細い線用のギボシなんて見たことも無いのが正直なトコで、実際は騙し騙し使うしか無いんだけどね。
まあここらを色々写真に撮ってみたので参考になればと思う。
コレが俺の使ってるオープンバレル・・・いわゆるギボシ端子の圧着ペンチ。
ストレートで確か3〜4000円だったかな?
一度で両方カシメれるようになってる。
仕事でも使うんで一箇所づつチンタラやってたら間に合わん。
で、コレがウチの100円均一カゴに転がってた圧着ペンチ。
ホムセンで端子セット980円辺りで売ってそうな品物。
まあ安物っぽいと言っても、ダイス部の肉も厚めでそう悪くはない方だろう。
コレより酷いのが良く廃車のトランクに殆ど新品状態で転がってる。(笑
てなモンで適正サイズの1.25sqeを圧着してみた。
圧着ペンチさえそれなりのモノを使っていれば、特に何も工夫せずに、これぐらいのレベルで決まる。
しかしペンチが悪いと・・・・
一見なんて事なさそうに見えるが、芯線側は奥までキッチリ噛みきってないし、被覆側は電線を噛み込まずに倒れ、重なって線を押さえてるだけ。
上手く写ってないけど、裏側から見れば変形してバリが出てしまっている。
まあこんなモンでもそれなりに使えるのだが、電線が細いとイチコロで抜けてしまうのである。
キレイに決めるには、そのペンチのクセを掴むというか、何かツボがある事が多い。
圧着前に少し端子を狭めるとか、内側に曲がるように形成してやるとか。
てなモンで鍛錬を積めばキレイに決まる確率も上がるが、確実性はあまり無い。
適正に圧着すればどのくらい強いのか・・・
てなモンでこんな事をやってみた。
圧着したギボシをニッパで掴み、電線側でGA70のリアショック2本を吊ってみた。
ショック2本で10kg以上は楽勝で超えるだろう。
それくらいの力で引っ張っても大丈夫。
本来はこれぐらい頑丈なギボシだが、ちょっと電線が細くなるとぜ〜んぜんダメ。
一般的な太さだと思われる0.75sqeで色々圧着して、それを力一杯引っ張ってみた。
実は引き千切る前の写真を撮ってたハズなんだが、ドコ探しても見当たらない・・・(ォィ
一番目は何もせずに普通に圧着したモノ。
圧着部にどうしても隙間が空いてしまう。
引っ張ってみると割と強く付いていたのだが、やっぱり抜けてしまう。
変に引っ張らない限りは大丈夫かとは思うけど、やはり心許ない。
次に俺が普段やってる方法で、多めに被覆を剥き、芯線を折り曲げて厚みを稼いで圧着。
これも手で引っ張ると抜けたというか切れた。
芯線側圧着部にまだ芯線残っているのが見えるだろうか?
無理矢理引っ張れば抜けるのではなく切れるのである。
まあ結構頑丈な部類だろう。
3番目はダークホースの芯線ごと圧着。
某巨大掲示板の車板DIYスレ346さんの方法なんだが、これがまた想像以上に頑丈。
手では引き抜くのが辛いと思い、ペンチ2本で引っ張ったらなんと線側が千切れた。
これは結構使えると思う・・・が、やはり正規の方法ではない、いわゆる
なので、用途を選んで使おう。
裏技
基本的に芯線の接地面積が減るので、大電流負荷には禁じ手かと思う。
このサイズの電線で流れる電流考えれば問題ナシとも思うが、まあその辺りを判断出来る人向けかと。
最後に思いつきでやってみた2本一緒に圧着して1本を切るという方法。
これは見た目はキレイに収まってたんだけど、実際の強度は1本締めと変わらなかった。
こりゃ使えん・・・
ギボシはコレくらいにしとくか。
次にアースなどに良く使う裸圧着端子。
安価だし先のギボシの圧着ペンチを買えば大抵はオマケで圧着出来るし、その気になればペンチでも十分圧着出来る。
これだけでも十分な強度があるが、車みたいに振動が多くハーネスが動く可能性がある場合は一手間入れてやる。
このように熱収縮チューブを入れ、圧着部を保護&補強してあげるのだ。
これから何度か触れるが、こういう電線の接続で何がウィークポイントかと言えば、
である。
接続部と芯線の境目
被覆が付いてるウチは良いのだが、被覆が無いと柔らいので、折れ曲げの力がモロに芯線に掛かる。
更に圧着なり接続なりを行うと、芯線より硬い接続部と芯線の境目に曲げストレスが全て集中してしまうのだ。
そしてそのストレスが積重なりプッツリと切れる。
これが振動や折り曲げで電線が切れるメカニズムである。
コレの裸端子の例を出してみると・・・
よくやりがちな失敗で、圧着部と被覆に隙間が空いている場合。
被覆を剥き過ぎて圧着部より出過ぎる場合に、芯線切らずに帳尻合せるとこうなる。
まあこれでも十分な強度はあるのだが、コレを折り曲げるとどうなるか・・・
折り曲げのストレスは、一番柔らかい芯線剥き出しの部分に集中する。
この折り曲げストレスが蓄積する・・・まあぶっちゃけ何度かコネ回してみるとこうなる。
こうなると何が危ないのか・・・もちろん切れてしまうのもあるが、一番怖いのはその寸前。
芯線の半分も切れてしまうと、もちろん流せる電流は半分になる。
10A流れている線で芯線が切れて半分以下とかになればどうなるかと言えば
のである。
発熱して燃える
ある意味プッツリ切れてくれた方が余程マシなのだが、こういうのはジワジワと切れて行くのでとっても危ないのだ。
これを防ぐ為に、ギボシ等のオープンバレルは芯線を噛む部分と被覆ごと噛む部分が分かれているのだ。
裸端子の場合は、この隙間が無駄に空かないようにしなければいけない。
そしてリングスリーブ接続、通常の接続でも、かならずテープを巻くなり熱収縮チューブなりで、接続部分を補強して、折り曲げストレスが掛かるポイントを、
のが重要なのである。
接続部以外へズラす
こうやって熱収縮チューブ入れるだけで曲げストレスを逃がす事が出来るのが分かるだろうか?
テープ巻きの主な目的は絶縁だけど、こういう補強の意味もあるので心得てやってみて欲しい。
次にギボシを介さない接続。
まずはオーソドックスな絡げ接続かな。
電線の被覆を剥き・・・
2〜3回絡ませる。
そして絡ませた上で、残りの芯線を捩る。
これで完成。
たったこれだけでも凄く頑丈で、ここで無理矢理引っ張ると接続部が外れる前に芯線が千切れる。
中途半端な圧着よりも頑丈だし、ヘタにハンダで補強する必要も無い。
むしろハンダ付けすると、接続部に硬い部分と柔らかい部分が出来るので、ソコから千切れる可能性もあるのだ。
で、このままだとショートしてしまうので、テープを巻いて絶縁するワケだが、面倒だ不恰好だなんて理由で、テープ2回程しか巻かない人が多い。
まあ気持ちは分かるし、絶縁出来ていれば一応問題無いのだが、テープの巻き数が少ないと、折り曲げストレスに対して弱いのだ。
繋いで芯線剥き出しの部分で折れているのが判るだろうか?
折り曲げストレスが入ると、どうしてもこの部分にストレスが集中するので切れ易くなる。
面倒で不恰好でも、多めにテープ巻いて補強してやらねばならない。
もっとスマートに絶縁&補強したいなら熱収縮チューブを使うと良いだろう。
次に俺が普段使ってる、ハンダ付けと熱収縮チューブによる接続方法。
エンジンスワップなんかでハーネスをイジる場合、何十、何百という電線を繋がねばならない。
その場合時間掛かるのは良いとしても、全て絡げ接続してテープをキッチリ巻き、その接続部を束ねると
になってしまうのだ。
10倍近い太さ(当社比)
そこでもっと素早くスマートかつ安全に繋げないかと、色々考え編み出したのがこの方法。
まずは芯線をチョットだけ剥く。
こんなんで本当に大丈夫か?と思うかもしれないけど、ハンダ付けは一種の溶接みたいなモンなんで、これで全然大丈夫。
むしろ無駄に剥くと、ハンダ付けに時間が掛かる上に失敗し易いのだ。
で、この芯線に
を施す。
予備ハンダ
ハンダメッキとも言うけど、ハンダ付けで重要なのがこの工程で、ハンダ付けを知らない人は、コレをすっ飛ばしてイキナリハンダを付けようとするから上手く行かない。
電線をコテ先で温めつつハンダをチョンと付けると、まるで乾いた砂に水を撒いたようにハンダが吸い込まれて行く。
慣れると2〜3秒で出来る。
で、2本とも予備ハンダを施し、切った熱収縮チューブを入れておく。
んで、コテ先にちょっとだけハンダを付けておき、2本を重ね合わせてコテ先でチョイとハンダを溶かすと接続完了。
で、先に入れておいた熱収縮チューブを接続部に移動し・・・
ライターでサッと炙ると完成だ。
コレに掛かる時間は、俺で1本辺り概ね45秒くらいかな?
熱収縮チューブを事前に切っておくorカット済みの物を使えば軽く3秒、最近ワイヤーストリッパーを導入したんで、更に3秒は短縮出来る。
100本近く繋ぐとこの6秒は無視出来ないのだ。(笑
あと割と正確に接続長を合わせる事が出来るのも特徴かな。
さて、こんな接続法で本当に切れないのか?だけど、正直コレで切れたらお手上げだってくらいの強度は確保出来ている。
まずは折り曲げだけど、実際に曲げてみるとこうなる。
被覆の中まで染み込んだハンダメッキ+熱収縮チューブの補強で段階的に曲げストレスを逃がしてるので、接続部を直接折らない限りは大丈夫。
そして無理矢理捻り回してみると・・・
このようにヒシチューブの境目で切れる。
引っ張り強度は、実際に引き千切ってみると・・・
接続部右側は予備ハンダが入ってて、本来は被覆に隠れてる部分である。
要するに被覆ズレる程引っ張らないと切れないワケだ。
これで切れるなと言うなら、もう電線自体の強度から考慮せねばならんというか、
っちゅー事である。
接続するな
接続点を作ると、生の電線以上の信頼性は絶対に確保出来ないからね。
実際アルトはコレで2年、5バルブスワップのハチロクのエンジンルームでも現在でえ〜と3〜4年は軽く経過してるか。
もちろん現在も絶好調で走ってるし、マゴソも1年以上、JZA63も問題無しである。
欠点は太い電線や複数本の同時接続には向かない事。
接続自体は可能だけど、段差が大きく出るので接続部の角を熱収縮チューブで保護しきれないのだ。
まあ1.25sqeまでなら大丈夫だし、3.5seqでも熱収縮チューブ2つ入れば大丈夫。
ソレ以上は素直にリングスリーブ接続&自己誘着テープでの処理をオススメしたい。
それとコレが一番のネックかもしれんけど、
な部分か。
ハンダのスキルが重要
ハンダに慣れてしまえば、予備ハンダ時の濡れ方だけで判断出来るんだけど、知らない人はそうは行かない。
ちなみに予備ハンダが上手く行ってるかどうかは折り曲げてみれば判る。
折れ曲がる部分が被覆の部分に来るのが正解。
コレが百発百中で出せればOK。
自信の無い人は素直に絡げ接続かリングスリーブなどで接続しても強度は変わらないから、無理しなくても良いと思う。
さて、最後にオマケで、スピーカーケーブルの接続や工作機械の電源ケーブルを切ってしまい接続する時の一工夫。
大体はこんな感じで接続し絶縁すると思う。
でもコレではもし絶縁が取れた場合、ショートする可能性が高いのだ。
そこで電線を切り被覆を剥く時に一工夫。
このように、+と−を入れ替え、先端を揃えてから片方だけを切る。
そして被覆を剥き、+と−を合わせ接続すると・・・
長さが揃った状態で、接続位置がズレるのだ。
こうしておけば信頼性も上がるし、見た目にもキッチリ長さが揃ってキレイだし、なによりもプロっぽく仕上がる。
つまらん事だけど、ちょっと覚えておくと良いかも。
てなモンでまだまだ書き足りない部分あるけど、こんなモンで堪忍してくれ。(^^;